着磁された磁石を航空輸送する場合の規定
磁性体を航空輸送する場合、通常の梱包では航空計器に影響を及ぼす恐れがあるため、IATA(国際航空運送協会)基準の漏洩磁束規定に合わせた梱包状態にする必要があります。具体的には以下の3つに分類されます。
A:非磁性物件(一般貨物扱いで航空輸送可能)
航空輸送の為に包装された磁性物件の梱包表面上の任意の点から2.1mの距離において、磁気コンパスの振れ(偏向)が2度未満または磁気測定器(テスラメーター等)での測定値が0.002Gauss(2x10^(-7) Tesla) 未満の物件。
B:磁性物件(航空輸送可能、但し危険物としての取り扱いが必要)
航空輸送の為に包装された磁性物件の梱包表面上の任意の点から2.1mの距離において、磁気コンパスの振れ(偏向)が2度以上または磁気測定器(テスラメーター等)での測定値が0.002Gauss( 2x10^(-7) Tesla )以上で、且つ4.6mで2度未満または0.00525Gauss (5.25x 10^(-7) Tesla )未満の物件。
C:磁性物件(航空輸送不可)
前記A、Bの範囲を超えるもの。この場合、航空輸送はできません。
漏洩磁束の計算例
マグネット(100x50x10mm、10mmが着磁方向)を1個、着磁方向がZ軸方向になるように原点に置き、1辺が5,000㎜(5m)のXY、YZ、ZX計算面を作成したモデル。各面の磁束密度の計算を行い0.002Gauss、0.00525Gauss の範囲を調べます。
XY平面の計算面
YZ平面の計算点
ZX平面の計算点
計算結果
計算結果は、磁界分布データを選び保存すると2次元の表形式で、csvファイルで保存されます。エクセルシートで開き、値を見やすくするために、値を対数(10のX乗)の形に書き換えます。この場合0.002Gaussは10^(-2.699)Gaussと表せるので X=-2.699 が非磁性物件としての値となります。このようにして計算結果を加工して、エクセルシートの等高線グラフでグラフ化すると以下のようなグラフが得られます。
XY平面の漏洩磁束
YZ平面の漏洩磁束
ZX平面の漏洩磁束
計算結果の説明
上記の計算結果を見ると、Z軸方向(この場合は磁石の磁化方向になります。)の漏洩磁束がX,Y軸方向と比べて大きくなっていることがわかります。また非磁性物件であるための条件値0.002Gauss( 対数値で-2.699)は、Z座標値で3600㎜(3.6m)であり、条件である2.1mを上回っているため、梱包表面から2.1mで0.002Gauss以下にするためには1辺が 3.6-2.1=1.5 の2倍の3mの梱包中心に磁石を置く必要がありますがこれは現実的ではありません。
一方磁性物件条件値である0.00525Gauss(対数値で-2.280)は、上記計算結果のグラフからZ座標値で2800㎜(2.8m)であり、条件の4.6mでは、漏洩磁束密度の値はこれより小さくなりますので、磁性物件の条件は満足します。すなわちこの場合は磁性物件としての航空輸送が必要となります。
梱包の改善方法について
磁石が1個の上記計算では、磁性物件としての航空輸送が必要になってしまいましたが、改善方法としては、2つの方法が考えられます。1つは漏洩磁束を減らすために、梱包の周りを鉄板で囲みこむ方法、もう一つは磁石を1個ではなく、磁場が互いに打ち消しあう方向に4個並べる方法です。鉄板の効果はKojimagでは計算できないため、ここでは4個の磁石をNSが対称になるように並べて梱包したときについての計算を行います。
4個の磁石の配置
4個の磁石はNSが互いに対称な位置に以下のように配置させたモデルを計算します。
1個の磁石の場合と同様に、磁石を着磁方向がZ軸となるように対称中心を原点に置き、1辺が5,000㎜(5m)のXY、YZ、ZX計算面を作成したモデルで計算を行います。
計算結果
計算結果は、磁界分布データを選び保存すると2次元の表形式で、csvファイルで保存されます。エクセルシートで開き値を見やすくするために、値を対数(10のX乗)の形に書き換えます。この場合0.002Gaussは10^(-2.699)Gaussと表せるので X=-2.699 が非磁性物件としての値となります。このようにして計算結果を加工して、エクセルシートの等高線グラフでグラフ化すると以下のようなグラフが得られます。
XY平面の漏洩磁束
YZ平面の漏洩磁束
ZX平面の漏洩磁束
計算結果の説明
上記の計算結果を見ると、1個の磁石の場合との比較で、漏洩磁束密度が大幅に減少していることが確認できます。非磁性物件であるための条件値0.002Gauss( 対数値で-2.699)は、XY、YZ、ZX平面すべての面で中心から半径2.1mの円内にあり条件を満足していることがわかります。
従って、このように4個磁石を配置して梱包した場合は、A:非磁性物件の条件として通常に航空輸送ができることが確認できました。このように磁石の個数と配置は漏洩磁束に大きくかかわってくることがわかります。